キカイガキライ管理人のすいる(@me_swill)です。
今回も臨床工学技士と縁の深い人工呼吸器のお話。
それも、臨床でよく使われる「人工呼吸器の基礎の基礎」となるモードのお話です。
こういう方のために、現役の臨床工学技士ができるだけわかりやすくお伝えしようかと思います。
基礎の基礎であるSIMV:同期的間欠的強制換気についてお話します。
ではでは、今回もはりきっていきましょう!
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SIMV:同期的間欠的強制換気の特徴
それではSIMVについて見ていきましょう。
設定した回数だけ自発呼吸に同期して強制換気を間欠的に行う換気様式。
自発呼吸を残しながら強制換気を行うことができるので、weaningにもよく使われ(ていた)、設定次第でweaningへの移行を段階的に行える。
一番の特徴として以下のことが挙げられます。
特徴
- SIMVの強制換気は、量規定と圧規定のどちらかで設定する。
- 量規定の場合は VC-SIMV、圧規定の場合はPC-SIMVと呼ばれる
キーワードは、何度も言いますが「強制換気」と「自発呼吸」が大いに関係するようです。
SIMVのメリット
自発呼吸に同期させ、強制換気を間欠的に行うことができるSIMV。
メリット
- 血行動態が正常であれば「循環」への影響が少ない。
- 自発呼吸を残しながら、強制換気の回数を設定できる。
SIMVの名前の通り、シンクロしやすい・同期しやすい?!
SIMVのデメリット
物事にはイイことばかりでなく、悪いこともある。
SIMVにも当然デメリットはあります。
デメリット
- モードによって呼吸仕事量が増加する場合がある。
- 患者は次に吸う換気様式か予測できない。
SIMV(+PS)の場合、強制換気と自発呼吸(PS)が入り混じり、患者さんは次にどちらの換気様式がくるのか予想しにくい。
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イメージ的には2種類の換気様式があるため、人工呼吸器使用の最低限の目的である「呼吸仕事量の軽減」を達成できない可能性があります。
自発呼吸がSIMV回数を上回っている場合は?
自発呼吸がない・少ない場合は、ほぼ強制換気になりますね。
ただし、自発呼吸が設定した呼吸回数を超えている場合は、どのような換気の仕方になるのでしょうか?
設定呼吸回数で時間を割ると、何秒間に1回強制換気をするかどうかがわかります。
60(秒)÷12(回)=5(秒/回)
設定呼吸回数:12回
設定呼吸回数が12回だと、5秒に1回強制換気が入るということになります。
その5秒間の前後に「トリガーウインド」という、自発呼吸の感知をするトリガーが有効になる範囲があります。
トリガーウインド中に呼吸をすると、自発呼吸の感知をし強制換気もしくは自発呼吸(補助)ができるわけです。
トリガーウインド以外の時間帯では換気の補助は行わないか、PSをかけるかのどちらかです。
キーワード
- トリガーウインド
SIMV使ってる?他施設の動向は?
実は、個人的に「SIMV」を積極的には使用していないorオススメはしていません。
臨床工学技士は、基本的に医師の指示のもと生命維持管理装置の操作を行っていますので、医師の判断によるところが大きいかと思います。
しかし、臨床工学技士としてそれぞれのメリット・デメリットを把握して、医師や看護師、その他のスタッフに助言していきたいと考えています。
では、他施設では「SIMV」をどのように使用しているのでしょうか?
他の施設では「SIMV」をどれだけ使用しているのだろう?
私はまったく使用していないので、他の施設の動向も気になるところ🤔
— すいる🍁ME・大学院生(仮) (@me_swill) 2018年11月4日
このtweetに対してリアクションがありました。
この場をお借りして感謝したいと思います。
SIMVはアシストと強制両方を管理しないといけないので、煩雑になりやすい→だからA/CからすぐCPAPに移行した方がやりやすい
と集中治療科の先生が仰っていて、呼吸器のことよく分かっているドクターにとってはもうSIMVは過去の物って感じです。— ももぐらんぱ(臨床工学技士×◯=∞) (@momograndpa) 2018年11月4日
当院は自発が少しでもあればSIMVになってます。
あまり呼吸器管理に臨工が深く関わってないのも理由の1つです。
最近は在宅用呼吸器ばかりが出ているので調節換気を使ってるのも減りました。— アレグレット@なんでも屋ME (@nandemoya_me) 2018年11月4日
施設により、SIMVを使用している・使用していないといった意見が!
私の記憶では、一昔前までは人工呼吸器を使用するとなったら、とりあえず「SIMV(+PS)」といった流れがありました。
では、なぜこのような流れになったのでしょうか?
SIMVの使用が減ってきている理由
全国規模、世界規模で私自身が調査しているわけではないのですが、体感的に周りの施設においてSIMVの使用が減ってきているように感じます。
SIMVが使われなくなっている理由について、ひとつずつ私見を交えつつ見ていきたいと思います。
モードによって呼吸仕事量が増加する場合がある
「デメリット」の項で少し触れました。
少し詳しく見ていきますね。
こちらの図は「A/C」で換気している波形になります。
設定した回数だけ自発呼吸に同期して強制換気を行う換気様式。
設定呼吸回数以上の自発呼吸がある場合、自発呼吸にトリガーして設定一回換気量が送気される。
そしてこちらは、臨床の場でよく見られる「SIMV(+PS)」の波形となります。
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何が違うのかと言うと「自発呼吸」の部分。
- 自発呼吸がない:設定された1回換気量が入る
- 自発呼吸がある:設定された1回換気量が入る
- 自発呼吸がない:設定された1回換気量が入る
- 自発呼吸がある:呼吸器は送気せず自発呼吸(もしくはPS)が入る
自発呼吸がない場合は設定された換気量が入りますが、自発呼吸がある場合の動き方がそれぞれ違います。
強制換気と自発呼吸(もしくはPS)の設定が煩雑になりがちになるのもポイントですね。
重症患者に対してSIMVを用いることは, 「設定換気回数は人工呼吸器で換気してあげるけど,残りの回数は自分でがんばってね-」であり 「呼吸パターンがコロコロかわるけど, その試練にも耐えてね-」です.
出典元:小尾口邦彦 ER・ICU診療を深める①救急・集中治療医の頭の中ver.2
想像して見てください。
weaningが遅れるかも?!
人工呼吸器を使用する瞬間から、普通は抜管を考えていきます。
では、SIMVではどのような方法でweaningを実施していくのでしょうか?
weaningを検討した場合、以下のように設定を変更していくかと思います。
SIMVの換気回数を減らしていく方法が現在主流であり、今も採用する病院が多いかと思います。
しかし、この方法により呼吸筋疲労を招きweaningの失敗率が上昇するとの報告が!
また、SIMVよりPSVの方が離脱までの期間は短かったという結果もあるようです。
こういうことから、SIMVをあまり使用しない風潮に変わってきたのではないでしょうか。
SIMVを使用するタイミングは?
SIMVのことを少しでもわかっていただけたでしょうか。
SIMVというモードって、なかなか理解しにくモードですからね。
では、再び本題に入りましてSIMVはどんな時に使用されるのでしょうか?
こんなシチュエーションの時に使用する場合もあるようです。
ポイント
- CPAPにモード変更したが夜間のバックアップ目的に使用する
- 鎮静剤のボーラス投与などで一時的に自発呼吸が消失する
- 自発呼吸が不規則で無呼吸アラームが頻回に鳴る
いろいろな使い方が考えられると思います。
第一に、呼吸器につながっている患者さんのことを最優先にし、自施設の考えなどとと照らし合わせながら最適なモードを提案していきたいですね。
SIMVについてわかったら、少しだけ深堀りした記事を見てみよう!
要チェック
最後に
今回は「SIMVのメリット・デメリット」についてお話しました。
SIMVは、なかなか難しいモードだと個人的に感じています。
それでも、目の前に使用する・せざるを得ない方がいるのならば、全力でそれを理解して施行していきたいと考えます。
要チェック!
ぜひ参考にしてください。
ではでは、またいつか逢う日まで…。
【参考文献】
1)野口裕幸 他 ナース専科呼吸ケア.2012年12月増刊号
2)小尾口邦彦 ER・ICU診療を深める①救急・集中治療医の頭の中ver.2
3)Brochard L, et al. Comparison of three methods of gradual withdrawal from ventilatory support during weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 1994;150(4):896-903.
4)大塚将秀 人工呼吸のウィーニング ースムーズで安全な呼吸管理をめざしてー
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